時にはのんびり読書でも
毎週のように薬草関連のイベント続きで疲労がたまっていたせいでしょうか。
帯状疱疹になってしまいました。
1週間前の7月22日に異変に気付き、初めは腰痛と思って整形外科を受診しましたが、ほどなく腰部に湿疹が発現。
皮膚を再受診し、抗原検査を経て帯状疱疹が確定しました。
抗ウイルス剤アメナリーフ錠と複数の鎮痛剤、ビタミンB12製剤が処方され、服用しながら仕事は続けています。
様々な要因で、夏場の7~9月には帯状疱疹の発症が多いそうです。
オーバーワークが原因と思われ、自宅では横になって安静にしてはいますが、何かしていないと気が済まない性分。
これを機会に積ん読していた本を読み漁ってみることにしました。
街とその不確かな壁
1冊目は村上春樹著「街とその不確かな壁」。2023.7.29読了。
言わずと知れた日本を代表するストリーテラーの一人、村上春樹氏の最新長編小説。
村上作品は出たら毎回買っていて、この小説も今年4月の刊行と同時に買いましたが、忙しくて積ん読していました(^-^;
現実世界と、17才の僕と16才の君が共同で創造した壁に囲まれた架空の街。
現実と非現実が交錯するパラレルワールドで物語が展開します。
氏の過去の作品「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」を彷彿とさせる世界観と思ったら、それ以前に基になった本作と同名の短編があったらしく、その書き直しであることが「あとがき」で明かされていました。
物語と薬草と
冒険譚も性描写も比較的少なめの淡々とした進行で、物語の起伏が少ない印象ですが、その分、思春期の少年少女の純粋な思いやいつも少数派の立場に立つ著者らしい優しさが引き立っています。
二部、とくに元図書館長、子易さんの正体が明らかになってからが面白く、一気に読み進みました。
個人的にはこの没入感がたまらなくて毎回村上作品を読んでいると言ってもよいです(^^♪
主人公の「僕」は、ある日、高い壁に囲まれた創造上の街に迷い込み、門衛から視力を奪われるのと引き換えに、「夢読み」の資格を与えられ、街の図書館で「古い夢」を読む仕事に就くことになります。
その図書館の司書が思春期に唐突に生き別れた「16才の君」。
でも「16才の君」に思春期の記憶はなく、「僕」を覚えていません。
司書として日々淡々と「僕」をサポートしますが、その仕事の一つに、目の傷や疲れをいやすため濃い薬草茶を淹れる仕事があります。
その街には薬局がなく、薬草畑から薬草を摘んできて薬を作ります。
特殊任務を背負った「夢読み」の癒しのアイテムとして薬草が登場します。
ちなみに目にいい薬草といえば、現実世界ではタカサブロウ、キク、クコ、ハッカ、ナンテン、ブルーベリー、セキショウなどでしょうか(笑)。
もちろんこれらの薬草は物語とは関係ありません。念のため(^-^;
疫病を防ぐ
この「街」の成立は謎に包まれていますが、街に張り巡らされた高い壁は、疫病を防ぐためにあるという解釈が現実世界の登場人物「イエローサブマリンの少年」によって提示されています。
それは魂の疫病であり、終わらない疫病であるとも。
疫病から守られた街は、夢読みとしての役割をはたしている限り永続性が約束されますが、時間も、音楽も、笑いもない生命力や躍動感を欠いたいわば「世界の終わり」のような場所。
その「街」は、思春期の純粋な思いが外部からの疫病に侵されないよう無意識下に創造された避難場所のような領域を意味するのでしょうか。
コロナ禍で行動が極度に制限されていた社会はある意味、壁に囲まれた街に似ていたのかもしれません。
高度制限社会の影を引きずりながらも、ようやく現実世界に回帰しようとしていますが。
あるいは、戦前の日本と戦後の日本の対比に見立てられなくもないなと。
全体として難解で示唆に富む内容なので、もう一度読み返して自分なりの解釈を深めていきたいと思います。
次回は未定(^-^;
書評は以前からA4ノートに手書きで綴ってきましたが、ブログに書くのは初めて。
たまには薬草以外の神経を使ってみるのも新鮮でいいものです(^^♪
気が向いたらまた連載したいと思います。
最後までお付き合いいただきありがとうございますm(__)m